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【感想】『自分の小さな「箱」から脱出する方法』―― 自分の捉え方を考え続けるということ

感想

例えばビジネス書や自己啓発書を読んだとき、読んだ直後は「なるほどな〜」と啓蒙された気がして、気持ちが前向きになって、人生を良くしていきたいと心から思うだろう。

しかし、一晩経って朝が来て、仕事や家庭の様々な雑事、うまくいかない人間関係や不条理な出来事にいざ直面すると、そうした上機嫌もすっかりかき消えて、あるのはいつもの灰色の日常。結局何も変えることができないまま、昨日の決意も薄れてしまう……。

理想を実行に移すのは、誰にとっても難しい。

では、どうして翌日になると決意が薄れてしまうのか? それは、本を読み終えた時点で、考えることをやめてしまうからだ。本を読み終えると、その満足感で自分が成長した気になる。積読を既読に変えた充実感、海馬に新しい情報が埋め込まれた喜び、そこで思考がストップしてしまう。

もし、本を読み終わった時点で満足感がなければどうだろうか? 満足感ではなく、更に考え続けることを促す本があったとしたら……? そう、今回読んだ『小さな「箱」から脱出する方法』は、まさにそういう種類の本であった。

この本では、とある主人公の視点を通じて、小説のように展開が進んでいく。どうして人は自分の固定観念に囚われてしまうのか、いつの間に(無意識のうちに)他者を「モノ」のように捉えてしまうのか? それを脱するためには……本当の意味で良いリーダーになるにはどうすれば良いのかが書いてある。

しかし、書いてはあるのだけど、この本には「明確な答え」が用意されていない。こうすれば人間関係の問題が解決するという「万能薬」あるいは「銀の弾丸」がないことを教えてくれる。

とはいえ、ヒントは与えてくれている。それは「自分が『箱』の中に囚われていないか常に考え続ける」ということだ。

考え続ける、ということにポイントがある。具体的なテクニックは二の次で、自分が他者と交流するときの基本姿勢に、何かしらの歪みを抱えていないか、それを考え続けるように促してくれるのだ。

この本は難しい。自分が箱に囚われているかどうかを、常日頃から考え続けなければならないのだ。自分は本当に他者のために貢献できている人物だろうか? 自分の良心に反するようなことをして、他者の問題だと捉えてしまってはいないだろうか?

本当の問題は自分の中にある。それは、相手がどうであるかに関係なく、自分ごとの問題として捉えなければならない。そして、そのことに「気づく」ことこそが、箱から脱出するための第一歩なのだと、この本は教えてくれたと思う。